思い通りに写真を撮りたい

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花火と残影 

昨日思いついたことを急きょ短編小説にしてみました。

     花火と残影

 村井春樹がカメラから顔を上げたのはファインダーに見覚えのある女性が映ってたからだが、その女性は彼を気にすることなく通り過ぎて行く。
 人違いか……それでもいい。
「片山敦子さんのお母さんじゃないですか?」
 声をかけられた女性は怪訝な顔をするも立ち止まった。
「敦子さんと東山高校で同級だった村井で、何度か自宅に行ったことも……」
「あ、あ思い出したわ。すっかり変って気づかなかった。ごめんなさい。元気そうでなによりね」
「敦子さんは?」
「立ち話もなんだからお茶でも飲まない?」
 二人が会うのは二十数年ぶりだったが、おたがい好印象だったのか其々の面影を記憶してるようだった。村井は敦子の近況がどうなのか知りたくて声をかけてたし、こう暑いのでは猫もそうそういないしエアコンが利いた店でコーヒーを飲むのもいいと思った。それで敦子のことを聞いた。
「高校卒業したあと仕事行くのに何度か村井君と同じ電車に乗り合わせたことがあったって聞いてたし、その時も付き合ってると思ってたのに、結婚したいって連れて来たのは会社の人。まだ二十歳で早いんじゃないのっていったんだけど、その人山梨で葡萄農家してて、自然のなかで生活するのが好きだからって結婚したの。それからしばらくしたら子供できたんだけど、産後の肥立ちが悪くて亡くなって……せっかく会ったのに敦子がそんなことになってて、ごめんなさいね」
「そうでしたか……」
「これ、敦子の娘」
 スマホを見せられると敦子そっくりな少女で、何歳か聞くと撮影したときは中学生だったのが今年成人式をすませたという。
「相手方に引き取られてるんだけど、敦子の忘れ形見で会いに行くと喜んでくれるし、今年はお盆の墓参りに行こうと思ってるの」
「そうですか……」
「村井君と一緒になってたら、山梨なんか行かないで毎日のように会えてたかと思うと……」
「いや……亡くなったのは残念だけど、僕なんかよりきっといい人なんでしょう」
 自分より葡萄栽培をしてる男性と一緒になって正解だったと思う。


 バブル崩壊とともに仕事が暇になり、ひょんなことで猫の魅力に憑りつかれ写真を撮り始めてる村井春樹。そんな猫を自宅で飼ってて餌をあげてる彼に、妻が今夜は冷やし中華が食べたいといって仕事へ行った。結婚しても妻は仕事を続けてて立場が逆転したかのように、夫に家事をまかせきりだ。それでも彼は稼ぎが悪いししかたないと割り切ってる。なにより外猫を撮影できるし、その猫にまつわる人たちといつしか友人となって付き合うのが楽しい。高校卒業後は親戚のところで働いてたがそれが新潟へ引っ越してしまい、やむを得ず飛び込んだペンキ屋は遊ぶ暇がないぐらい稼いだ。そして三十歳で独立し大手ゼネコンの孫請けとして職人を送りこんでたが、それも十年ほどで暇になり今では昔の職人仲間からお呼びがかかるのを待つだけとなってて雇ってた若い者たちは皆去ってる。それで稼ぎは不安定だが妻の収入が三十万近くあるので経済的に逼迫することはない。それでも髪結いの亭主的な存在でストレスを抱え円形脱毛症になった。それも野良ネコとの出会いで快復したし、まさに猫様様で猫のいない生活など考えられなくなってた。
 夜帰宅した妻が盆休みをどうするかと聞くので、行きたいところがあるなら行けばいいといった。
「それなら、友達と三日間出かけるけどいいわね」
 初めから自分と一緒にどこかへ行く気などないのだ。このところ夫婦生活などなかったし、おたがい気持ちが離れてる。浮気しようがなんだろうが構わない。今はただ猫と一緒にいるだけでいいと思ってるし、快く送り出してやろう。

 盆入りに村井の妻は猫のマー坊を撫でにこにこしながら出かけて行ったが、夫の村井は両親の墓参りに行ったついでに近くの里山をぶらついてる。
 彼の仕事場は都会だけでなく郊外もあるが、人里離れたという感じのところだと本当に猫の子一匹いないようなところだった。そんな味気なさもさることながら都会のごみごみした現場も嫌だった。それだけに昔から人の暮らしが息づいててなおかつ自然が多い里山をひかえた墓参りは命日と盆や彼岸だけでなく、暇を持て余してる最近は月命日ごとに足を運んでる。里山の畑近くで木に上ってる猫を撮影してた時、猫好きなのかと聞かれたのが縁で行くたびにお茶を飲みに寄るようにというのがいた。そこへ行くといつもは四十代と七十代の夫婦四人なのに戸を開け放った縁側に子供たちが何人も並んでスイカを食べてるし、部屋では大人たちが酒盛りをしてにぎやかだ。
「お、また墓参りかい?親孝行だね」
「楽しんでるところお邪魔したようですがこれを」
 村井が同年代の雨宮一男に手土産を渡した。
「佃煮か。これは有難い」
 盆で皆集まってるのを撮って欲しいという雨宮だが、村井は知らない者が突然カメラ向けたら皆堅くなってしまうからと体よく断った。
「一緒に飲んでるうち仲良くなるから」
 そういう雨宮が強引に上がらせ皆に紹介したあとビールで乾杯した。そして猫を撮らせたら右に出るのはいないし女なら美人に撮ってくれるというと、女たちが撮って撮ってとはしゃぐ。それで村井がカメラを構えると笑ってポーズする。おちゃらけた顔は良くも悪くも本人らしいし、老いも若きもにこやかに写ってた。その一人の女性に目を留めた村井に、雨宮が義理の姪だといった。
「うちの身内のなかでいちばんの美人で、葉子っていうんだ」
「あたしがどうかした?」
「葉子ちゃんのこと美人だって見とれてる」
 それはそうよとおどける葉子が写り具合を見に来て、プリントしたら送って欲しいという。
「俺が受け取ったら送ってやる。住所変わってないだろう」
「あたし、もうすぐ結婚してフランス行くの。それまでプリントしてくれればいいんだけど」
「そんなの聞いてないぞ。いつ結婚すんだ」
 葉子の話では結婚相手がフランスでワイン醸造の修行をするというし、その費用が馬鹿にならないので結婚式は両家の家族だけで地味婚にするという。夫になる男は同い年の二十歳で金がないということだった。
「そうか……お母さん生きてたら喜ぶだろうけど、若いだけに心配するかもな」
「お母さんどういう人だったのかわからないけど、きっと賛成してくれると思う。お父さんもそういってたし。それより叔父さん、たまにはうちに遊びに来てよ。お父さん今日も仕事忙しくて来れなくて、たまにはゆっくり一緒に飲みたいっていってるよ」
 雨宮がそのうち行くからというと、葉子はそろそろ帰るからと皆に挨拶し始めた。それで村井も帰ることにした。


 村井は妻が帰って来るのと入れ替わるようにして家を後にした。ひさしぶりに花火を撮影するためで、行き先は勝沼だった。
 中央自動車道は盆休みも過ぎて順調に勝沼インターに着いた。雨宮が教えてくれたできたばかりだというほったらし温泉へ行くのに迷ったが、露天風呂から富士山が見えて気分がいい。そして以前泊まったことがあるぶどうの丘の宿泊棟へ行った。障子戸を開ければ一面葡萄畑のむこうに甲府市街が見えるが西日が強くすぐに閉めた。前回来たときは勝沼甲府間が開通して間がない頃だから二十年近く前だろうか、まだ二十歳すぎて間がない頃だった。それに片山敦子と来たときは免許取り立てで高速道路を走るのが怖かったことが思い出され苦笑してしまう。それでも敷かれてる布団で大の字になると彼女の事が思い出され胸が熱くなってきた。
 先月片山敦子の母と会っていらい敦子のことが頭から離れないのは彼女が死んでいなくなってることもあるが、もし彼女と結婚してたらどうなってるかとあれこれ想像してしまうからだった。というのも妻に浮気してる節があるし、今の自分のままでいいのかという忸怩たる思いが募ってるからだ。敦子と結婚してればどんな苦難も我慢して乗り越えただろうが、妻ときたらあなたは都合が悪くなると逃げてばかりという。そのくせ勧善懲悪で融通が利かない真正直なところがあなたらしくていいとも。だからこそ現場の工程会議でシール屋がもっと早く仕上げてくれないと間に合わないともめることがなんどもあり、工事課長の補佐役だった妻がそんな自分を陰で慰めてくれてるうち結婚してしまった。そして不合理なことを要求してくるゼネコンの仕事をする気がなくなり個人宅の塗り替えを主にするようになったが、安かろう悪かろうの手合いにいいくるめられる施主が多く思うように仕事の受注ができない。それでも妻はしかたないわよと同情し慰めてくれた。こんな状況を甘受してる場合ではないと思うものの、憑りつかれた猫を撮りたいとき撮れるしこれでいいやと投げやりになってる。敦子だったら知り合いに仕事がないか聞いてみるからとか、自分を励ましてくれただろう。なんでも一緒にやろうという彼女だったし、たとえ仕事がなくても彼女と結婚してたらこんな結果になってないのではと思ってしまう。

 薄暗い浴室で寝汗を流し展望台に行くと何人かいるが、三脚を立てるスペースは十分ある。それで撮影準備をしてると陽が沈んでいくなか昨日まで笛吹川で鵜飼いしてたという声がし、葡萄畑のはるか向こうに残照で光る川面が見えた。甲武信ヶ岳を源に東沢渓谷となり西沢渓谷と合流し広瀬ダムに注ぎ、武田信玄の菩提寺恵林寺わきを流れ石和温泉を経由し後、鰍沢で釜無川と合流すると冨士川となって身延線とつかずはなれずで蛇行しながら静岡県の蒲原地区で太平洋に流れ込む長大な川だ。中学生の時山に魅せられ多摩川の土手から冬の大気が澄んでると小さく見える雪山が南アルプスの農鳥岳だと知った時は歓喜し、高校で山好きな者にそのことを話すと嘘だろうといわれた。それでも片山敦子が一緒に見たといってくれた。それで山好きな同級生が地図で確認すると手前の滝子山左に見えるらしいと納得した。敦子はなにかと気になる存在になってたし、最寄り駅は二つ離れてるが通学時は決まって同じ電車で同じドア口に乗り合わせてたしおたがい好意を抱くようになってた。それで彼女が家に来ないかというので何度も遊びに行ったし、彼女の母親と姉からいい男だといわれ嬉しい反面こそばゆかった。

 ドドンババンという音とともに花火が打ち上がり、まわりにいる者が綺麗といいながら手をたたいてる。
 村井はデジカメが発売されても高くて買えなかったが値崩れしたこともあり去年十倍ズーム付きのを購入した。もっぱら猫撮りに使ってて花火の撮影は初めてだが、フィルムカメラ同様バルブ機能もあるので従来通りの設定で撮影し始めた。何度か試し撮りをし勘をつかむと、あとは花火の明るさと数しだいでシャッター時間を決めていくだけだ。その花火に敦子の姿が重なり始めるとシャッターを閉じ忘れそうになるが、曇る目をしばたかせながら撮影した。
 花火が終わり展望レストランへ行くと敦子の母親がいてびっくりする村井をさらに驚かせたのは後ろから来た女性だった。
「え?青梅で写真撮ってくれた人ですよね」
 そういうのはフランスへ行くといってた葉子だった。
「お婆ちゃんと知り合いなんですか?」
「葉子ちゃんのお父さんになってたかも知れない人」
 そういわれた葉子は事情が呑み込めず立ったままだし、村井にしても葉子との奇遇な出会いに呆然としてる。
「敦子が高校時代、夏の校外学習で金峰山へ行ったこと話してくれたの。暑いなか山登りなんか嫌だっていってたのが帰って来ると楽しかったって喜んでた。子供のころ海へ連れて行くと怖いって泣くこと多かったのに、高尾山へ連れて行くと泣きごといわないで私たちと一緒に登ってた。きっとそのころから山が好きだったのね。行き帰りに食べたほうとうや手打ち蕎麦が美味しかったし、この下でバーベキューしとき葡萄畑が見えたって。それを聞いて親子で何度か来てたし、村井君とも二人きりで行ったって聞いたわよ。それも泊りがけでね」
 それを聞いた葉子がようやく納得したのか村井の顔を見つめた。
「地唄舞の練習で借りてた部屋に来たことあったでしょう」
「え、えぇ……」
「晩くなったから泊まっていくようにいって三人で川の字なって寝てたのに、村井君雨やんだからって夜中帰ったわね」
 よくそんなこと覚えてると赤面する村井。
「私、罪なことすると思ったけど雨降ってたし、それに村井君ならなるようになってもいいかなって」
 敦子の母を真ん中に自分と敦子は両端で寝てたが、十九の男としてはいたたまれない思いだった。
「私だけ帰って二人にするべきだったかなって思ったわ。そのことを敦子にいったら笑ってたのは、二人はすでに結ばれてたんでしょう」
 敦子の母が村井を好意的に感じたのはPTAでなにかと悪い噂が多い彼なのに、会うとそんなことはまったくないし敦子が信頼をよせてたからだった。煙草を吸って不良じみた感じがあっても家に来ればきちんと挨拶する。時にはいつもおやつや食事をご馳走になってるからと手土産を持って来ることもあって、いい少年としか思えなかった。そう感じるのは生後一年を待たず高熱を発して亡くなった長男が生きてれば、村井のようになってるのではないかとイメージを重ねてるからだった。夫にそのことをいうと死に児の年を数えてもなにもならないといわれたが、娘だけでなく息子がいたらと思いがちだった。その娘二人は近所から美人姉妹といわれ嬉しかったが嫁いでいくのかと思うと寂しさが先走ってた。それでも敦子が連れて来た村井なら近所でいつでも会えると思ってたら、山梨へ嫁いで行ってしまったのは金峰山に登ってから、山梨はいいところだといってたしそういうものかと諦めるほかなかった。
「お母さんと村井さん、そういう仲だったのか……不思議」
 葉子は青梅の叔父の家で村井と会ったときなにかときめくものを感じてた。それが母とただならぬ仲だったことを知りなんとなく腑に落ちる思いだった。
「もう遠い昔のことです。今じゃ奥さんに面倒見てもらってる不甲斐ない男だし、敦子さんと一緒になってたら不幸にしてるんじゃないかって……だから一緒にならなくてよかったと思うし」
「夫婦って貧乏でもやっていけるわ。葉子ちゃんの結婚相手は頭いいのに大学行けなかったけど、それでも夢を叶えるのにフランスへ行く。それを葉子ちゃんが支える。貧乏よりお金あったほうがいいけど、食べていけるだけあればどうってことないのよ。それを年収五百万以上ないと嫌だとか、そうでないと苦労するなんて週刊誌が書き立てるから女性も男性も尻込みしちゃうのよ。ま、今の村井君がどういう状況か知らないけど、高そうなカメラ持っててここで泊まるんだし、貧乏してるように見えないけど」
 そんなことより空腹な葉子が思連鍋を食べようという。甲州牛を味噌仕立てのすき焼きにしたものでレストランの名物メニューなのを村井も敦子の母も知ってて、ワインを飲みながら食べた。敦子の母と葉子は食べ終えると眠くなったといって先に出て行くが、村井は飲み足りず一人で白ワインから赤ワインに切り替えて飲んでた。それもラストオーダーとなって部屋にもどるといっきに酔いがまわって布団に倒れ込んだ。


 起きてという声が何度か聞こえたが起きられない。しょうがないわねという妻が出て行く気配がしても目を開けられなかった。
 その村井が目を覚ましたのはざらっとしたマー坊に舐められる感触でだった。肩に座り込んでるのか重いし、何度も頬を舐められるくすぐったさにようやく目が覚めた。餌をあげなければと起き上がるとマー坊が一緒について来て廊下の隅で待ってる。いつものことながら行儀よく前足をそろえてる。餌を出すとこちらを見る顔が嬉しがってるようだが、もはや餌を食べるのに忙しく顔をかしげながらカリカリを噛み砕いてる。寝起きで焦点の定まらない目にそんなマー坊の姿がぼやけて見えた。

 待てよ。俺は猫を飼いたくても飼ったことないのに、なんで猫がいるんだ?

「やっと起きたか……」
 突っ伏してた村井が顔を上げると、居酒屋の主がよく寝てたといった。
「敦子なんて寝言いってた」
 夢の夢を見てたことに気づいた村井だが、片山敦子とは確かに付き合ってた。ぶどうの丘の古ぼけた宿泊施設で一緒に泊まったことがあるし、夢にしては現実味を帯びてた。
「花火撮るんだって頑張ってたのが中止なって、自棄酒飲んだわりにはいい夢見てたようだ」
 そうか……今日花火が始まる直前雷雨になって、それでここに来て生ビールを何杯も飲んだんだ。その雨が敦子の母親が雨が降ってるし終電も出てるから泊まっていけばといったのが夢になったのか……でも敦子は死んでなんかいない。盆前の同窓会で会ったときフランスに住んでると聞いたばかりだ。浮気しようかっていったらホテルについて来た。初めて男と女になった二人だったし、敦子は仕事が忙しいとかまってくれない夫に不満なようだった。それで母親に愚痴をこぼすと俺と一緒になればよかったのにといわれたらしい。敦子の母はなんだか知らないが、高校生のときから俺のことをよく見てくれて好意的だったのを覚えてる。それで別れて一緒になるかといったら、五十過ぎて離婚して再婚というのは気乗りしないという。それでも日本に帰って来たら会いたいといってた。
 そんなことを思い返してる村井に主が、こないだ教えてもらったほったらかし温泉へ行って来たという。
「天気よくて富士山見えたし、ついでに村井さんがいってたぶどうの丘で泊まったけど、あそこのレストランからの夜景はちょっとしたものだ。レストラン店じまいするまでいたらネオンがぼつぼつ消えて行くんだ。甲府じゃ新宿とか渋谷と違って夜早いんだろう。そんな夜景が乙だった。ホテルは部屋が広くて綺麗だし風呂は温泉だ。それでもそばにある天空の湯に行ったけど、そこから見る夜景もよかった。遊び人の村井さんらしくいいところよく知ってるよ」
「本当。こんないい男なのに結婚しないなんてもったいない」
 主の女房は二十年ほど前ふらっと入って来た一見の客だった村井が気に入ったといって、女性をよく連れて来てたのを覚えてる。それが一人や二人でなく五人ぐらいだったか、皆美人でスタイルがよかった。男盛りで気前のいい村井に女性たちが惹かれてるのが見ててわかったしそのもてぶりに亭主がやきもちを焼いてた。そんな村井が寝言で何度も敦子といってたのはどの女性だったのか思い出せないが、彼が写真を撮ってくれないかといったのを何枚かもらってた。
「懐かしいの見せるわ
「あっ」
「敦子っていう女性いるの?」
「いない。二十歳前に別れてるし、結婚してフランス行ってる」
「どれでもいいじゃない。このなかでまだ結婚してないのいたら一緒になったら」
「もう五十過ぎてるのに、皆結婚してるって」
 結婚したい時期はあったが移り気な自分が一人の女性と一生付き合うには不向きだと思いながら居酒屋を出た。
 雨はすっかり上がり親子が道路端で線香花火をしてる。火持ちの悪い花火はすぐに消えてしまうが、子供はそれでも喜んでる。母親は花火大会が中止になりそんな線香花火で子供を喜ばしたかったに違いない。いろんな女性とあちこち遊び歩いたのは少しでも喜んでほしいと思ったからだし、少し付き合うようになると昼頃電話をかけ美味しいお好み焼きを食べに行こうと羽田空港で待ち合わせそのまま大阪や広島へ飛んで行った。そんな自分に女性は馬鹿な金の使い方をするといっても喜んでた。金は天下のまわりものだという考えだし、なくなったらなくなったでそれなりの生活をすればいいと思ってる。老後のことを考えてなどというしみったれな考えはしてなかったが、五十過ぎるとさすがに先行きが不安になり浪費しなくなった。もう少ししたら田舎暮らしを始めたいと思ってるからだった。そこで猫を相棒にのんびりした生活もいいだろうと。マンションじゃ猫を飼えないし、面倒見てる猫を連れて行こうと思ってる。女より猫のがいいと思うようになったのだから、ずいぶん心境の変化をしたものだと自分自身おかしく笑ったら、そばに潜んでたのか猫が飛び出して行った。そんな猫が通過していく電車の灯りで照らされるがすぐに消えて行った。シューっという音がしたかと思うとパンというしょぼい音がして振り返ると誰かが打ち上げた花火だった。皆花火を楽しみにしてたんだろう。さきほどの親子がその花火に照らされ影絵のように映って見えた。そして向きを変え商店街を歩くと水銀灯がまぶしく目がくらんだ。その瞼に片山敦子の姿が映り、電車に乗ってもその残影は消えなかった。



撮影機材 OLYMPUS C730 ULTRA ZOOM
画像中央部が丸くボケてるのはレンズにごみがついてるのを知らずに撮影したためです
ほったらかし温泉の駐車場と売店や休憩所
spa_0001_20160824190130bae.jpg spa_0002.jpg spa_0003.jpg spa_0004.jpg 

ほったらかし温泉あっちの湯とこっちの湯ですが今はもっと広くなってると思います
spa_0005.jpg spa_0006.jpg 

勝沼駅からのぶどうの丘とホテルですが30年ほど前はもっと奥にあり古ぼけた町営の宿泊所だったのが今では第三セクターが運営しかなり割高になってるものの民間のホテルよりは安いです
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正月に大弛峠へ向かうのに途中で写したものです
左のギザギザなのが瑞牆山で真ん中は金峰山の五畳岩で右は鉄山だと思います
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テーマ: 日帰り温泉 | ジャンル: 旅行 |  trackback: -- | comment: 2 | edit

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